金銭教育について考えるうえで不可欠な3要素とは?

突然ですが、子どものいる親御さんに質問です。今年のお正月、子どもにお年玉をいくらあげましたか?

親や親戚等からたくさんのお年玉をもらった子どもは大喜びかもしれませんが、多くの親御さんにとっては、「懐が痛い」だけでなく、子どもが無駄遣いしないかどうか、気にかかるに違いありません。やはり自分の子どもには、上手なお金の使い方ができるようになってほしいものです。

ところが、いざ自分の身を振り返ってみると、「親である自分自身があまりお金の使い方が上手じゃないかも……」という方も少なくないのではないでしょうか。そこで今回は、子どもと大人、どちらにとっても大切な「金銭教育」について考えてみることにしましょう。

まずもっとも大切なのは、以下の3点だと考えます。

①働く楽しみを見出させる/見出す
②ニーズ(必要なもの)とウォンツ(欲しいもの)を 見極めさせる/見極める
③貯蓄の重要性を理解させる/理解する※子どもに対しては①~③を「させる」、大人は①~③を「する」。

「働く=傍楽」と実感させること 無駄遣いをなくさせること

①について、当たり前のことですが、お金を得るには働くことが基本。そうであれば、「働くこと=楽しい」と思えるのがベストであり、子ども自身の「将来、自分は何をやりたいか、何になりたいか」は、極めて重要です。そしてそのためには、そもそもどんな職業があって、実際にどんなことをしているのかを知る必要があります。「キッザニア(KidZania)」(東京・兵庫)や「カンドゥー(Kandu)」(千葉)といった職業体験型テーマパークを訪ねるのもおすすめですし、例えばマクドナルドの「マックアドベンチャー」など、職業体験サービスを行っている企業もありますので、積極的に活用してみてください。

また、普段の暮らしの中で、子どもがお手伝いをしてくれたら、よく誉めてあげましょう。「働く」とは、傍ら(周囲)の人を楽にしてあげること、すなわち「傍楽」であり、子ども自身がそれを自覚し、その行為に喜びを感じられるようになれば、本人の成長にとっても、大きなプラスになるに違いありません。

大人の場合、「働き方改革」が叫ばれ、「人生100年時代」と言われる今日、自分の定年は自分で決める時代になってきています。生きがいとしてだけでなく、「何歳までお金のために働くかを考える」ことも、ますます重要になってきます。

②は、要は「無駄遣いをなくす=お金は必要なものに使う」ということ。
子どもに対しては定番のお小遣い帳が、やはり効果的です。ただし、お金を使ったら記入させるだけではなく、親がきちんと確認をして、定期的に「本当に使って良かったのか?」の振り返りをして、子どもにその是非を納得させるようにしましょう。

「必要なものにお金を使うこと」の究極の形がライフプランですが、大人の場合、まずは目先の「予算」をたてることが大切です。例えば家電の買い替えや連休時の家族旅行の際等、予算内に収まってしかも必要な条件(家電なら機能や大きさ、旅行なら何がしたいか、どこに行きたいか等)を満たすものを検討してからお金を使う練習を繰り返すことで、習慣化できるようになります。

将来を決定づけるのは、貯蓄の多寡 「貯蓄の力」の理解が重要に

③は、「貯蓄の力」を理解させる/することです。言うまでもなく、モノを買う場合、即金とローンでは通常、即金の方が支払額は低く抑えられます。もちろん、最初にまとまった額を貯める必要があるかもしれません。しかし、結局、「借りてから返す」よりも「貯めてから使う」方がトクをするのです。

この理屈は、特に低年齢の子どもには難しいと思います。そこで、まずは②で述べた、お小遣いの用途を振り返る際、「お小遣いは使い切らずに少しずつでも残して貯めておく」よう指導しておくことです。そうすれば、いざという時、「ひと月分のお小遣いでは買えないものも、貯めて増やせば買える」という経験を得て、「貯蓄の意義」「貯蓄の力」への理解がさらに進むでしょう。

一方、大人の場合、「貯蓄の差=将来の格差」と言っても過言ではありません。筆者は、貯蓄には大きく5つの効果があると考えていますが(図表1)、貯蓄額が高ければ高いほど、その効果は上がっていきます。

しかし、ご存知のとおり、お金を貯めるのは決して楽ではありません。事実、金融広報中央委員会による2017年の調査では、二人以上世帯の実に31.2%が、「金融資産を保有していない」と答えたそうです※1。ここで言う「金融資産」とは、事業のために保有している資産や、日常的な出し入れ・引き落としに備えた現金や預貯金を除いた、「運用のためまたは将来に備えて蓄えている」ものを指します。つまり3割を超える(二人以上)世帯では、生活を支えるものが、毎月の給料や年金しかないということになります。しかも、「増税や物価上昇による負担増の一方で上がらない賃金」「増えにくい公的年金や預金金利」「少子高齢化」といった現状においては、手元にお金を残すこと、老後を生き抜くためのお金を準備することはますます難しくなっています。だからこそ、少しでも早い「お金を貯められる生活」の実践が重要となります。

本来、適正な貯蓄額とは「定年後の生活を担保できる金額」と「不測の事態(治療費や就労不能等)に備えられる金額」から計算するのが望ましいと言えます。例えばねんきん定期便をもとに、自身の公的年金額を把握。年金受給者になった時、貯えがどのくらいあれば良いのかを考え、実践に移しましょう。

※1 金融広報中央委員会『「家計の金融行動に関する世論調査」[二人以上世帯調査]』2017年

お金を貯めるカギは「やりくり」 公的制度の理解と活用も不可欠

お金を貯めるための具体的な方法のひとつに、「先取り貯蓄」があります。これは、「給料をもらった時点で、一定額を貯蓄にまわす」というもの。口座から月の自動引き落とし分と貯蓄にまわす分を除いた額(例:手取りが30万円で、自動引き落とし分が5万円、貯蓄する額が2万円なら、30万円-7万円=23万円)を引き出して、それで1カ月をやりくりしていきます。より強制力を高めるために、貯蓄分は積立定期預金等にして簡単に引き出せないようにしておくのも、ひとつの方法です。

しかし現実には、「今までうまくお金を貯められなかったのに、先取り貯蓄を始めた途端、急にお金が貯まるようになった」などという結果が、簡単に得られるわけではありません。
なぜなら、そもそも「貯蓄ができる」ということは、現状を認め、将来に対する備えの必要性を実感したうえで、我慢すべき時には我慢をして、やりくりした結果に他ならないからです。いくら貯蓄を先取りしても、やりくりできなければ、結局、貯蓄分を引き出すか定期預金を解約、あるいはローンに頼らざるを得ません。つまり、貯蓄をするうえで本当に重要なのは、「いかにやりくりをするか」なのです。

先取り貯蓄後のやりくりポイントとしては、「効果が大きい」ものよりも、「その分の費用をカット・削減しても我慢できる」ものから手を付けることが挙げられます。また、通信費や住居費、光熱費、各種固定費(スポーツジムの会費や新聞・雑誌の定期購読料等)は、一度見直せば長期にわたって費用削減効果が得られます。

最後に、上手にやりくりしていくために、社会保障制度や税制等の公的制度についても理解を深めていただきたいと思います。以前に当コーナーでご紹介した「セルフメディケーション税制」や「高額療養費制度」をはじめ数多くの制度があります(図表2)。正しく理解・活用して、家計の負担を減らし、その分を貯蓄できるよう役立ててください。そして、ある程度の貯蓄ができた時点で、将来の安心・万一への備えのため、貯めたお金を“活かす”方法を考えていくと良いでしょう。

 

執筆者
団野 修 (だんの・おさむ)Osamu Danno
ライフコンパス代表。ラジオ出演、講演の他、年間500回以上の 20代~70代の家計相談を実施。